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金曜日, 4月 20, 2007




サクラ抄・其の一
西行が望んだ往生のとき「その如月の望月のころ」は今年の太陽暦では4月3日。二月は暖かい日が続き、気象庁もトチ狂った予報を出して大方の顰蹙を買った。そも、気象庁は開花予想を花芽の休眠打破には冬の寒さが必要という知見で、冬季気温観測データから割り出す開花予報式を採用。これまで続けていた花芽の重量を実測する方法を10年ほど前から止めていた。そのうえコンピューター入力ミスが重なり記録的な速さの開花を予報。人の目による観測確認を怠り、データ偏重の傾向は気象予報に限らず世の中に蔓延してしまった。データに基づけば僕は発病した難病平均の余命を終えて、さっさと旅立っていなければならない。ちらり、「データ野球」野村監督の陰気な顔を思い出す。
桜は僕がフィールドとしている県立公園で毎日チェックしている。
車椅子に縋ってこの公園で歩行訓練を毎日続ける日々、佐野籐右衛門の「桜のことは桜に聴け」をかみ締めながら「もうすぐ?」「まだまだ」と、樹に聴き、話しかけてみる。
3月23日、たこ焼きや金魚すくいなど露店商の一群が場取りを決めて雪洞が飾られた。花がほころび出した翌日から公園は花見ムードで、晴れると人出が切れない。26日に早くも三分咲き、4月1日には五分咲き、3日満開。8日がピークで花びらが宴たけなわの人々に降りかかる。9日車椅子にも花びら満載、公園中が桜のカーペット。10日露店が撤収。12日には枝に葉が混じり、13日お終いの花吹雪、14日前夜の雨ですっかり枝が葉っぱに衣替え。
ジャパンタイムス(7日付)のA・チャベスは、たった二週間のサクラで飲み食いし、酔いしれる日本人のアイデンティーを汲み取ることができるとし、日本人はプラスティックと自然を調和させるチャンピオンだと、持ち上げている、ブルーシートを広げ場所取りする一群を指して。桜の花弁がいいのか、樹がいいのか小首を傾げながら、日本人を理解するのにもっとも手っ取り早く、外国人も容易に参加できると「花見」を勧めている。
桜花散りぬる風のなごりには水なき空に波ぞたちけるー紀貫之
車椅子から見上げる空はまさしく水辺だ。